広報やおつ 平成30年7月号
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広報やおつ No.57221少年の主張「ランナーコーチのプライド」八百津中学校 三年 大 隆慈「ナイス、ランナーコーチ!」少し寒くなってきた11月のある試合でかけられた言葉に、僕はかつてない喜びを感じていた。僕は小学校のときからずっと野球にうちこんでいる。中学校でも迷うことなく野球部に入部した。しかし、小学校のときはなんとかレギュラーがとれていたけれど、中学校の野球部では人数も多く、なかなかレギュラー入りすることができない日々が続き、そのまま二年生の秋をむかえた。そんなある日、いつも通り練習していた僕に、顧問の先生から、「よく声が通るから、三塁ランナーコーチをやってほしい。」と言われた。三塁ランナーコーチというのは、三塁ベースに向かって走ってくるランナーに対して「止まれ」や「走れ」を伝えたり、相手のチームの選手の癖を見つけて、チームに伝えたりする役割のことだ。僕は、少しだけ迷ったけど、とりあえずやってみようという気持ちで、僕はランナーコーチの仕事を引き受けた。その日から、僕は試合のときはもちろん、実践的な練習をするときにもランナーコーチとして参加することになった。ランナーコーチとしてのはたらきを褒めてもらえることもあったが、悔しい気持ちもあった。僕だってもっと実践的な練習をしたい、試合に出たい。その思いが消えることはなかった。しかし、その思いが変わったのは、11月に行われた三年生との最後の試合をしたときのことだ。そこで僕は、三年生チームと二年生以下チームの両方のランナーコーチをやることになった。試合も半ばになってきた頃、三年生チームの攻撃になり、初めてランナーが二塁まで行き、チャンスになった。いよいよ、僕の出番だ。しかし、僕は緊張していた。なぜなら、二塁ランナーは中体連までほんのちょっとのことでがみがみと怒るような、ちょっと怖い先輩だったからだ。僕は正直怖い、と思っていたけれど、ランナーに指示するのはランナーコーチである自分しかいない。僕は、勇気をふりしぼって思いっきり叫んだ。「ゴー!ゴー!ゴー!」そして、次のバッターがヒットを打つと、先輩は僕の指示通り、迷うことなく三塁まで走り抜けてきた。そのとき、いつも怖いと思っていた先輩から、「ナイス、ランナーコーチ」と褒めてもらった。僕はとても驚いて、うまく返事をすることができなかった。一緒にプレーをしていた一年半の中で、先輩に怒られることはたくさんあったけれど、褒められたことは一度もなかった。その先輩が、僕のランナーコーチとしてのはたらきを褒めてくれたのだ。僕は、自分に与えられた仕事に、このとき初めて自信をもつことができた。それから、僕はランナーコーチの仕事に、それまで以上に一生懸命取り組むようになった。そんな僕の真剣さを今では多くの人が認めてくれている。それは、顧問の先生や同じチームの仲間はもちろん、他のチームから褒められることもあった。練習試合で相手チームの人から「あの三塁ランナーコーチはすごいね。勉強になるよ。」と言われたときは、とても誇らしい気持ちになった。ランナーコーチは、決して目立つ役割ではない。試合で活躍する選手に比べたら、裏方のようなものだ。でも、僕はこの役割に誇りをもっている。野球でも、学級や社会でも、目立つところで頑張っている人が全てではないことを、僕は知っている。そういう人たちが頑張れるのは、その裏で支えている人の頑張りがあるからだ。僕たちは、一人ひとりが自分の役割を一生懸命果たすことで、互いに支え合っている。僕はこれから、最後の中体連にむけてこれまで以上に部活を頑張っていく。めざしているのは、もちろんレギュラーだ。しかし、ランナーコーチとしての出場でも、自分の役割を一生懸命果たしたい。それが、僕のプライドだから。優秀賞○八百津中学校3年  淺田 真花 「勝ち組と負け組」○八百津東部中学校3年 金井 心音 「私の家族と成長」○八百津中学校3年  小沢 翔大 「かっこいい人間」○八百津東部中学校3年 野村 菜々子 「本当に大切なもの」○八百津中学校3年  山内 怜奈 「大切なもの」高校生の部○八百津高校2年   大澤 優衣 「チャレンジの3日間」○八百津高校3年   各務 綾 「将来の夢のために」(敬称略)最優秀賞○八百津中学校3年  大 隆慈 「ランナーコーチのプライド」最優秀賞の大隆慈さん。いきいきとした表情で語り、会場がさわやかな感動で包まれました。

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