違います。派遣生の緊張感はかなりのものであったと思います。まさに「苦労を買う」経験です。しかし、派遣生はやり切りました。ホームステイ先の各家庭のご配慮もあり、日を追うごとに、関係性が深まっていったようです。「言葉や文化が違っても、互いに理解し合おうとする気持ちが大切である」。派遣生は異文化理解における大切でシンプルなコツに気づけたことでしょう。派遣生にとって、大きな経験となったはずです。リトアニアを離れる際の、派遣生とご家族とのハグがそれを物語っています。リトアニアの最終日には、学校関係者、カウナス市関係者、両国児童生徒、そして在リトアニア日本大使館の方々が集まり、お別れ式が行われました。両国の児童生徒が日本語で合唱しました。曲は『君が明日と呼ぶものを』。この曲は、八百津小学校の杉原千畝創作劇エンディング曲であり岐阜県国民文化祭テーマ曲でもあります。曲の最後には、リトアニアの子どもたちが日の丸を掲げてくれました。合唱後のブラボーの声と拍手。会場は温かい友好の空気につつまれました。6 ポーランドでは、アウシュヴィッツやワルシャワ蜂起博物館などで、平和や人としての生き方について深く考える場面がありました。あえて残されている生々しい爪痕や映像を目の当たりにした子どもたち。実物を目にしたこと、施設や展示の空気感、そしてガイドさんの熱い語り、現地でなければ味わえない経験です。事前研修での予備知識が、実感を伴う深い理解となります。アウシュヴィッツで派遣生は、ガイドに対してこんな質問をしています。「なぜ人はこんなひどいことをしてしまうのか」、「なぜこの施設を残しているのか」、「ガイドとしての想いは」などなど。ガイドが力強く語った「君たちのふるさとには杉原千畝という、人の弱さに立ち向かい、正しいことを貫いた先輩がいる」の言葉から、派遣生は自分をみつめ、そして勇気をもらったことでしょう。派遣生は人間の弱さと強さの両方を自分の言葉で必死に理解しようとしていたと思います。それは、小中学校で学んできた八百津町の人道教育とつながります。その夜のホテルでの反省会。派遣生の口からは、日常と未来に向けた、温かくたのもしい言葉が発せられました。世界の中の日本人として、どう考え、どんな生き方をめざすのか、それぞれの派遣生なりに感じることの多い研修だったのではないでしょうか。これは、現地にて肌で感じるからこそ実感できるものです。この研修のきっかけである、郷土の先輩、吉田茂氏(国際交流に係るご寄附)、杉原千畝氏(リトアニアカウナス市との縁)、そして、研修を後押ししてくださった両国の関係者や保護者のみなさまに深く感謝いたします。5 感動のお別れ式平和・人道の想い7 感謝33
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