広報やおつ 令和7年6月号
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『伝統を守り、未来につなげたい』みなさんは、伝統って何だと思いますか?僕の地域には、四百年以上も続く祭りがあります。中学一年生のとき、僕はその祭りに参加しました。「ドンドン」と太鼓を力一杯にたたく僕。高らかに篠笛を鳴らす大人たち。「だんじり」が力強く町を走り、観光客がカメラを向けていました。町じゅうに、にぎやかな声が広がっていたのを覚えています。そんな中で、ふと考えました。なぜ、この祭りは四百年もの間、続いてきたのだろうと。その答えは、「つながり」にあると僕は思います。中一のある日、昔の祭りの映像を見る機会がありました。太鼓のリズムや笛の旋律は今と少し違っていました。が、同じ「だんじり」が、そこにくっきりと映っていました。そして、僕は思い出しました。父や祖父に太鼓の叩き方を教わったことを。その父も祖父も、またその前の世代に教わったと言います。そのとき僕は気づきました。人から人へと、代々受け継がれてきた「継承のつながり」。そして、地域のみんなで祭りをつくり上げていく「団結のつながり」。この二つのつながりが、四百年もの、長い間、祭りを支えてきたのだと。でもそのつながりが今、少しずつ薄れつつあるように感じます。子どもの数が減っていて、僕の母校も、廃校になるかも知れません。主役であるはずの子どもたちが、祭りからいなくなってしまうかも知れないのです。一方で、僕たちの生活は、どんどん便利になっています。SNS、AI、スマホ……。技術は進歩し、生活はどんどん快適になっています。でもその影で、「人と人のつながり」が、少しずつ弱まってきているような気がするのです。小学三年生のとき、叔父に「僕たちの未来はどうなるの?」と聞いたことがあります。そのとき叔父は言いました。「技術は進歩するに違いない。しかし、日々の暮らしの中の、人と人とのつながりは、消えていくと思うよ。」当時はよくわかりませんでした。でも今、その言葉の重みが少しずつ分かるようになってきました。中学二年生のとき、将来の夢を発表する授業がありまし僕はその言葉に大きなショックを受けました。僕は思います。SNSやAIは、夢を奪うためのものでは実際、ある村では、SNSで、木材の活用法を発信したここの成功例のように、SNSやAIを上手く使えば、僕た新しい技術と、昔から続く伝統は、必ず共存できる。そう僕の将来の夢は先生になることです。たとえ、母校がなくそして、未来の子供たちと一緒に、SNSやAIを活用八百津東部中学校 三年 山田隼平た。友達の一人が、こう言ったのです。「僕の夢は電車の運転士。でも、AIに仕事を奪われるかもしれない。」なく、夢を支える力になれるはずだと。とで、売り上げが一・五倍に増えたそうです。村の木材は建材として、温もりのある家が作れると評判になり、村や、林業に従事する人たちの大きな希望になっているそうです。SNSは「希望」を生み出す力を持っているのです。ちの祭りにも新しい風を吹かせられる。祭りの魅力をSNSで発信すれば、観光客やボランティアが増える。さらに、もっと華やかで、もっとにぎやかな祭りになる可能性があると、僕は思うのです。信じています。なっても、僕はこの祭りを絶やしたくありません。地域の一員として、責任をもって祭りを盛り上げて行きたいと思っています。し、ふるさとの誇れる伝統と、人と人との温かなつながりを、未来へ引き継いでいきたいと強く思っています。33                   

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