外務省公電

外務省 確認

昭和16年2月4日

在プラーグ杉原総領事代理宛 松岡大臣発
「カウナス」領事館においてユダヤ避難民に対し
査証を与えたる事実確認の件
第10号

昭和16年2月4日、在プラハ総領事代理となっていた杉原千畝氏に、日本へ続々と上陸してくるリトアニアからのユダヤ系避難民の実態を把握するため、本省からカウナス在勤時に発給したヴィザの総数を至急電報で報告したうえ、これらの氏名、行き先、査証月日について郵便にて報告を求める電報です。

杉原 報告

昭和16年2月5日

松岡外務大臣宛 在プラーグ杉原総領事代理発
貴電10号に関し(ユダヤ避難民査証の件)
第12号

昭和16年2月5日、本省からのカウナス在勤時に発給したヴィザの総数の報告を求める電報第10号に対し、在プラハ総領事代理杉原千畝氏から松岡外務大臣宛返信されたもの。貴電10号に関し(ユダヤ避難民査証の件)において「「リスアニア」人ならびにポーランド人に与えたる通過査証2,132内ユダヤ系約1,500と推定す」と報告されました。

昭和16年2月28日

外務大臣松岡洋右宛
在プラーグ総領事代理杉原千畝発
普通第28号
在「カウナス」領事館扱査証調書送付の件

昭和16年2月28日付公信普通第28号に別添としてカウナス在勤時のヴィザ発給表が添付されました。この発給表には、通し番号、国籍、名前、入国ヴィザないしは通過ヴィザの種別、ヴィザ発給の日付、査証料、そして備考欄があり、32ページにわたって、2,139名の名前が記されています。

外務省 通達

昭和15年7月23日

松岡外相よりベルリン大使館宛 電報第469号

昭和15年7月23日 松岡外相からベルリン大使館および所轄の在外公館に向けて発信された、避難民に対するヴィザ発給に関する訓電。最近、ヨーロッパ方面より日本経由で、アメリカ大陸諸国へ渡航するユダヤ人、その他の避難民が多数いる。現に、日本郵船ベルリン支店にて、これら避難民の日本、アメリカ間の輸送を引き受けた者の数が、600人に上り、なお続々と申込がある。これらの者に対しては、行先国の入国許可手続きを完了した者に限り、そうでない場合は、通過ヴィザを与えないよう、取扱いに注意すること。念のため。この件をスイス経由にて、普通情報通り転電、または、転報することとされ、渡航条件不備なものには、避難民といえども通過ヴィザを発給してはならないことを通達しています。

杉原 報告

昭和15年7月28日

在カウナス杉原領事代理発
松岡外務大臣宛 電報第50号

昭和15年7月28日 在カウナス杉原領事代理から松岡外務大臣宛てに、リトアニアの混乱した国内情勢とともにユダヤ避難民が通過査証を求め、領事館に押しかけている状況を報告した電報。リトアニアの国内情報を伝えるに当たって、ソ連のGPUによる政治団体への弾圧、ポーランド人、白系露人、ユダヤ人、旧リトアニア政府の大物が逮捕される様子を詳細に打電しているとともに、ユダヤ避難民は日本を経由し渡米すべく、日本通過ヴィザを求め連日100名内外の者が領事館へ押しかけていることを報告しています。

杉原 報告

昭和15年8月7日

在カウナス杉原領事代理発
松岡外務大臣宛 電報第58号

昭和15年8月7日 在カウナス杉原領事代理から松岡外務大臣宛てに発信された、旧チェコ・スロヴァキアの旅券の持ち主に対するヴィザ発給の可否について判断を求める電報。前年解体したチェコ・スロヴァキアをはじめとする、当該時期にすでに存在しない国の旅券をもって通過ヴィザの発給を求めてきた人々への対応について尋ねた電報です。

昭和15年8月9日

在カウナス杉原領事代理発
松岡外務大臣宛 電報第59号

昭和15年8月9日 在カウナス杉原領事代理から松岡外務大臣宛てに送られた電報。有力なるワルシャワ出身のユダヤ系工業家「ベルグマン」他約15名の一か月滞在ヴィザ発給の可否について問い合わせたもの。昭和13年12月6日に作成された、ユダヤ人を他の外国人となんら差別しない方針を決めた「ユダヤ人対策要綱」の中に、「ユダヤ人を積極的に日・満・支に招致すらがごときはこれを避く。ただし資本家、技術家のごとき、特に利用価値ある者はこの限りに非ず。」とあり、在カウナス杉原領事代理は、この電報の中で、「ベルグマン」他約15名は「資本家、技術家のごとき、特に利用価値ある者」であるので、通過ヴィザのみならず滞在ヴィザを与えるよう求めています。

外務省 回答

昭和15年8月12日

松岡外務大臣発 在カウナス杉原領事代理宛
電報第18号 「チェッコ」旅券に
通過査証付与方の件 貴電58号に関し

昭和15年8月12日 松岡外務大臣から在カウナス杉原領事代理宛てに送られた電報58号に対する返電。チェコ・スロヴァキアが解体された1939年3月16日前に発給または期間を延長された旅券は、その有効期間であれば有効であるとされた。ただし、避難民については行先国の入国許可決定済みの者でなければ、通過査証を与えぬよう注意書きが添えられている。しかしヴィザ発給表によれば、この電報が到着して以降、チェコ・スロヴァキア旅券の持ち主に対しても通過ヴィザの発給が開始されました。

昭和15年8月14日

松岡外務大臣発 在カウナス杉原領事代理宛
電報第21号 「南米移住のユダヤ人十六名
本邦通過に関する件」 貴電59号に関し

昭和15年8月14日 松岡外務大臣から在カウナス杉原領事代理宛てに送られた電報第59号に対する返電。ベルグマン一行についての日本滞在については上陸許可後の問題とされ、この種の者であっても日本通過査証を与えられるのは行先国の入国許可手続きが完了した者でなければならず、手続き未了の者は上陸許可も与えられないとする極めて原則的なものである。なおヴィザ発給表によっても、滞在ヴィザを与えられた例は一件も確認できません。

外務省 要請

昭和15年8月16日

在松岡外務大臣発 在カウナス杉原領事代理宛
電報第22号 「避難民の取扱方に関する件」

昭和15年8月16日 松岡外務大臣から在カウナス杉原領事代理宛てに送られた、明確に避難民に対するヴィザ発給の制限を求めた電報。在カウナス領事館から発給されたヴィザを持参し、日本を経由してアメリカやカナダに向かおうとするリトアニア人の中には、携帯金が少なく行先国の入国手続きも終了していないため、上陸を許可できない者がいるので対応に困っているとして、今後は避難民とみられる者に対しては、行き先国の入国手続きを完了しており、かつ旅費および日本滞在費等の相当の携帯金を持っていなければ、通過査証を与えぬよう要請しています。

杉原 依頼

昭和15年8月24日

在カウナス杉原領事代理発 松岡外務大臣宛
電報第66号(依頼報)

昭和15年8月24日 在カウナス杉原領事代理から松岡外務大臣宛てに送られたヴィザ発給の特例許可を求めた電報。リトアニア避難中で米国移住予定のポーランド系ユダヤ人工業家「レオン・ポラク」について、妻子は米国入国査証を有し、すでに日本通過査証を発給されているが、「レオン・ポラク」本人については米国公使館からの査証が届かず、日本通過査証が未発給となっているので、米国公使館はすでにリトアニアから引き揚げ、リトアニア出国が日に日に困難となっていることを考慮し、「レオン・ポラク」に対する日本通過査証発給の特例許可を求める電報です。

外務省 回答

昭和15年8月28日

松岡外務大臣発
在カウナス杉原領事代理宛 電報第23号
「ユダヤ系ポーランド人「レオン・ポラク」の
通過査証に関する件」 貴電第66号に関し

昭和15年8月28日 松岡外務大臣から在カウナス杉原領事代理宛てに送られた電報第66号に対する返電。ポラクに対してはアメリカの入国許可が与えられた後にヴィザを発給するよう返電され、あくまで原則論を維持するものでした。

杉原 報告

昭和15年8月1日

在カウナス杉原領事代理発 松岡外務大臣宛
電報第67号 貴電22号に関し
(避難民の取扱方に関する件)

昭和15年8月1日 在カウナス杉原領事代理から松岡外務大臣宛てに送られた電報第22号に対する返電。米国方面への脱出を目指すリトアニアへ避難中の避難民にとって、カウナスには日本領事館の他にヴィザを発給してくれる中南米の公館はすでになく、日本の通過ヴィザが米国方面出国手続き上の絶対条件となっていることからも、日本の通過ヴィザは避難民たちにとってまさに命の綱であり、また日本領事館の引き揚げも切迫していることから、彼らの事情は「事情斟酌に値する」としている。そこで、そのような状況下にある避難民に対して特殊処置として、現段階で行先国への入国許可のない者、旅費の乏しい者に対しても、行先国の入国許可はウラジオストック到着までに、旅費は日本到着までに整えることを条件に、「外国人入国令」を拡大解釈してヴィザを発給していることを明らかにしています。

外務省 回答

昭和15年9月3日

松岡外務大臣発 在カウナス杉原領事代理宛
電報24号 「避難民の取扱方に関する件」

昭和15年9月3日 松岡外務大臣か在カウナス杉原領事代理宛てに送られた電報第67号に対する返電。杉原領事代理のカウナス領事館における「特殊処置」により発給された日本通過査証は、日本入国をめぐってウラジオストックにおいて混乱をきたしており、また日本の査証の信用を害するものとして、電報第22号の趣旨を厳重に守るよう要請しています。

杉原 報告

昭和15年9月6日

在ベルリン栗栖(三郎)大使発 松岡外務大臣宛
電報1169号 「カウナス」発貴大臣宛電報
第69号

昭和15年9月6日 在カウナス杉原領事代理からの領事館閉鎖を伝える電報69号を、ベルリン大使館が代送したもの(電報第1169号)。9月4日にカウナス領事館を閉館し、同日夜にベルリンへ向け出国したことを報告しています。

外務省外交史料館 所蔵