更新日:2025年3月13日
キベラ卒業生 1位受賞
人間の幸せ
エルヴィス・オチエノ
デリック・ムゴは、自分の娘を大学に入学させたとき、まさか娘が、ケニヤッタ大学で教育芸術の学位を取得したばかりの貧しいイスラム教徒の学生だったジェレミー・ハミシに恋愛感情を抱くことになるとは思ってもみなかった。「いやいや、これは全く残念なことだ」と彼はいつも言っていた。
ムゴ氏は、街で小さな小売店などをたくさん経営したりさまざまなビジネスをやっている大物実業家であった。娘のミッチェル・ムーゴがジェレミーを紹介したとき、彼はストレスに押しつぶされそうになった。彼はこの男がイスラム教徒で、しかも裕福な家系ではなかったので、決して好きではなかった。
彼は娘にジェレミーとの結婚を思いとどまらせようとしたが、娘はどうしてもと言った。このため、家族の間で大きな対立が生まれ、いつも口論になり、彼を開放するよう懇願されるようになった。このため、地域社会全体を巻き込んで彼女をこの貧しい男と結婚させないよう説得しようとしたが、それは無駄なことだった。
2010年3月6日、彼女は自宅から姿を消した。早速彼女の捜索が始まり、ケニアの官報The Standardに彼女が行方不明になったことが掲載され、そこら中でニュースになった。ムゴ氏は、娘を見つけた者には多額の賞金を与えると表明した。
このような展開の中で、娘のミッチェルはカヨレにあるジェレミーの家に引っ越すことにした。彼の父親がケニアのテレビを使って彼女の失踪をそこまで広く公表するとは想像もつかなかったが、それが現実になった。
彼女は、通常の生活を取り戻すために、周りのすべてが冷静になるのを屋内にとどまっていた。彼女は父親がしたことにストレスを感じながらも、隠れて沈黙を続けていた。
父親は、たった一人の娘を失うなんて......とソファに座りながら、静かに考え込んだ。彼の中ではまだ考えがまとまっていなかった。彼はテレビを前にして、目は集中していたが、心はそこになかった。その時、彼はどこでどのように助けを求めるかを考えていた。ムゴはこの出来事を受け入れようかとも思ったが、彼の心は重かった。どうすればよかったのだろう?娘の嫁入りを受け入れるということを友人たちにも相談したが、彼らは一貫して「それはあなたにとってとても残念なことになる」と言うばかりだった。
そんなある日、彼は座って深く考え込んでいた時に、あるアイデアが浮上してきた。それは彼にとってより理想的なものに思えた。「家族を取り戻そう。彼女はたった一人の娘なんだ。」一週間ほど考えいくつかのアイデアを出し、彼はジェレミーがより良い生活を送れるよう仕事を紹介することにした。そして、さまざまな人脈から、娘の居場所を知ることができた。彼が合意してから2か月後、ジェレミーを義理の息子を受け入れ、娘の生活のために率先して協力するようになった。
ムゴ氏にとってジェレミー・ハミシを息子と認めるのは簡単なことではなかったが、このときから、幸せを取り戻すことができたのである。彼の友達たちはその決断をすぐには信じられなかった。ムゴ氏の決断を最低の決断だという声もあったが、ムゴ氏は心の中ではベストの決断だと思っていた。そしてジェレミーが自分の決断が悪いものでなかったことを世間に証明するのにはただ時間が必要なだけだと思った。つまり、彼は、幸せな家庭で暮らすことが一番良い選択だという結論に達したのだ。