優秀賞
応募者氏名:朱 子恵
学校名:美濃加茂高等学校
学年:2年
題名:勇気が紡ぐ未来
今あなたは電車に乗っているとする。しかも、普段は人が多くて座れない座席に座ることができた。ではここで読者のあなたに質問をしよう。この時あなたは迷いなくお年寄りや妊婦さんなど助けが必要な人々に席を譲ることはできるだろうか。もちろん優先席ではない。車内は人が多く、席を譲れる人が自分以外にもいる。このときあなたならどうするだろうか。今までの私はすぐに席を譲ろうと思えども声をかける勇気が出なかった。周囲にも席を譲れる人がいるのに誰も動こうとしないし、相手に迷惑だと思われないかと迷ってしまい結局動けないのだ。その度に後悔で胸がモヤモヤした。だがそんな私を変えてくれた出来事がある。今でも迷ったときに勇気を与えてくれる大切な経験である。
それは高校一年生の冬のこと。私は友人らと電車で遠く離れた水族館へ向かっていた。休日だということも相まって電車内は混雑していたが、私たちは運良く全員座ることができた。電車に乗ってしばらくすると隣に座る友人が「あそこに妊婦さんがいるんだけど、席を譲った方がいいかな。」と耳打ちをして来た。彼女の指が示す方を見ると、そこには大きなお腹を抱えた妊婦さんがいた。私たちはすぐに席を譲ろうとした。しかし、私と友人を含めた五人の間では誰が声をかけるのかの話し合いばかりが続き、時間だけが過ぎていった。その時、別の友人が「まずは声だけでもかけてみない。」と口にした。私は今まで先のことを考え過ぎて行動ができなかった。しかし友人は先のことよりも今やるべきことに注目し、行動しようとした。時には無鉄砲だと思われかねないが、その考え方は当時の私に欠けていた柔軟さを持っていた。もし妊婦さんが困っていたら大変だと思った私は自ら声をかけることにした。
結局妊婦さんにはやんわりと断られた。けれどその後、妊婦さんは降車前にわざわざお礼を伝えに来てくださった。断られた時はやはり迷惑だったかと不安になったが、妊婦さんの笑顔を見て、勇気を出して声をかけてよかったと感じた。もっと良い解決法があったかもしれないが、最終的に妊婦さんも私たちも笑顔になれたということは、きっと私たちは正しい選択をしたのだろう。
この経験が教えてくれたのは、迷うよりも先に行動することの大切さだ。時には行動を起こしても拒絶されたり失敗するかもしれない。しかしそれらを恐れて行動しないでいては現状を変えられない。今の社会は価値観が多様であるがゆえに衝突も多い。だからこそ他人を思いやることを忘れず、勇気を振り絞ってお互いを助け合う行動を起こすべきだと私は考えている。挨拶でもいい。困っている人のお手伝いでもいい。より多くの人がそうした小さな勇気を積み重ねることで世界を少しずつ優しく変えていくのだろう。